2025年4月に日本武道館で2年ぶりの来日公演を行なったエリック・クラプトン。追加公演も含めると合計8日間もライブが行なわれ、日本武道館110回公演も達成した。本記事では、今回の来日公演のステージに用意されていたドイル・ブラムホールⅡのギターを紹介しよう。
取材・文=小林弘昂 通訳=トミー・モーリー 機材撮影=西槇太一
Doyle Bramhall Ⅱ’s Guitars
1964 Gibson
ES-335TD
貴重なレフティの64年製
今回のドイルのメイン・ギターは、最近手に入れたという64年製ES-335TD。ビンテージのレフティ・モデルはとても貴重で、ドイルのギター・テックを10年間務めるマティアス・ヨハンソンは、“楽器店で購入したものではなく、おそらくコレクターやブローカーなどから手に入れたのでは?”と予想。
入手してからはリフレットとリナットを行なったのみで、ほかはオリジナルのままだという。
ドイルのギター・プレイはレフティだが、弦は右利き用で張っているのが特徴(つまりギターを構えると1弦が上になる)。
弦はErnie BallのUltra Slinky #2227(.010〜.048)を愛用。
Gibson Custom Murphy Lab
1959 ES-335 Reissue Heavy Aged
カスタム製作されたワンオフもの
2024年に入手したという、Murphy Labによるヘヴィ・エイジド加工が施された59年製リイシュー・モデル。市販品ではなく、ドイルがオーダーをして製作されたものだという。シリアル・ナンバーは“A940099”。
オープンAチューニング(E-A-C♯-E-A-E)にセッティングされ、「Hoochie Coochie」のみで使用された。
オープン・チューニングのため、本器のみ弦はErnie BallのPower Slinky #2220(.011〜.048)。
1964 Fender
Stratocaster
長年ドイルを支える64年製
長年愛用している貴重な64年製のレフティ・ストラトキャスター。シリアル・ナンバーは“L80027”。以前、ドイルは本器について“素晴らしい木材が使われていて、今まで弾いてきたギターとは全然違う。塗装がかなり薄くて、それも鳴りに関係しているのでは?”とコメント。
マティアス・ヨハンソン曰く、過去10年間でリフレットを一度だけ行なったのみで、ほかに手を加えた箇所はないとのこと。
アメリカのピックアップ・ブランド、Ron Ellis Pickupsが本器のピックアップを測定し、64S Setというモデルを発売している。
Novo Guitars
SERUS J
ドイル仕様のSERUS J
アメリカ・ナッシュビルに工房を構えるNovo Guitars。工房スタッフに以前ドイルと仕事をしたことがある人がおり、その縁もあって2024年にオーダー製作されたもの。よく見るとヘッド・ロゴが反転してレイアウトされているのがわかる。シリアル・ナンバーは“24397”。
ボディは“焼き戻し”という乾燥工程を施したテンパード・パイン、ネックはテンパード・メイプル、指板はインディアン・ローズウッドという材構成。
ピックアップはLollarのP-90タイプで、ブリッジとトレモロ・ユニットはMastery製が採用されている。余談だが、ギター・テックのマティアス・ヨハンソンはダイナソーJr.のJ・マスシスも担当しており、JがジャズマスターにMastery製のトレモロ・ユニットを搭載するようになってからMastery製品の良さを認知したのだという。
今回のライブではオープンBチューニング(B-F♯-B-F♯-B-D♯)にセッティングされ、「Motherless Child」で使用された。楽曲によってはレギュラー・チューニングにすることもあるという。
Martin
000-28EC
クラプトン・モデルを愛用
ドイルが使用するアコースティック・ギターは、エリック・クラプトンのシグネチャー・モデル。ピックアップは搭載されておらず、ステージ上のマイクで収音される。
オープンBチューニング(B-F♯-B-F♯-B-D♯)にセッティングし、「Motherless Child」で使用することもあるとのこと。
弦はマーティンの.013〜.056。